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広島地方裁判所 昭和43年(行ウ)12号 判決

呉市西二河通六丁目一二番地

原告

山下真揮人

右訴訟代理人弁護士

秋山光明

岡田俊男

元村和安

呉市公園通四丁目一番地

被告

呉税務署長 三輪渉

被告指定代理人

菅野由喜子

和崎雅

恵木慧

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

一、当事者双方の求めた裁判及びその主張は、別紙中当該各記載のとおり。

二、証拠関係

(原告)

甲第一、二号証、第三号証の一ないし四、第四、五、六号証、第七号証の一、二、第八号証の一ないし六、第九、一〇一一号証、第一二号証の一ないし四、第一三号証の一ないし六を各提出し、証人大崎一正、同山下カツミの各証言、原告山下真揮人の本人尋問の結果を各援用し、乙第一号証、第三ないし第一一号証、第一三号証の二〇、二五、第一八号証の三、四、五、第一九号証の一ないし四、第二〇号証の各成立を認め、その余の乙号各証の成立は不知、と述べた。

(被告)

乙第一ないし第一一号証、第一二号証の一ないし四、第一三号証の一ないし二六、第一四号証の一ないし九、第一五号証の一ないし四、第一六号証の一ないし九、第一七号証の一ないし一〇、第一八号証の一ないし五七、第一九号証の一ないし四、第二〇号証を各提出し、証人佐々木孝治、同藤元昇、同佐藤信久、同廣津義夫の各証言を援用し、甲第一三号証の一ないし六の原本の存在は認めるが、甲号各証の成立はいずれも不知、と述べた。

理由

一、請求原因事実については、本件各係争事業年度における原告の事業所得金額が原告主張額であることを除き、当事者間に争いがない。

二、事業所得税額計算関係は、昭和三六年度分については、表二3仕入金額、同17台調整費、同18賄費及び同22雑収入の各科目、昭和三七年度分については表三1売上金額、同3仕入金額、同17台調整費、同22雑収入及び同26支払利息の各科目、昭和三八年度分については、表四3仕入金額、同17台調整費及び同22雑収入の各科目を除いて当事者間に争いがないから、以下争いのある右科目について被告の処分が適法であるか否かについて検討する。

(一)  昭和三七年度分売上金額及び昭和三六、三七、三八年度分仕入金額

1  証人藤元昇の証言によつて真正に成立したと認められる乙第一四号証の一、四、証人佐藤信久の証言によつて真正に成立したと認められる乙第一六号証の一、四、五、証人佐々木孝治の証言によつて真正に成立したと認められる乙第一八号証の一、六、七、証人藤元昇、同佐藤信久、同佐々木孝治の各証言によれば、ローズパチンコ店備付の帳簿(以下、単に帳簿という。)には、昭和三七年度における同店の売上金額として金二二三、九五八、二〇五円が、昭和三六、三七、三八各年度の仕入金額としてそれぞれ金一八七、八四一、八七二円、金一八四、三三五、九三一円、金一八五、四二九、九九六円が各記帳されていることが認められ、右認定に反する証拠はない。

2  簿外預金について(被告の主張一(一)1、二(一)1〈1〉、二(一)2、三(一)1)

原告には、昭和三六年度において被告の主張一(一)1(以下、A預金という。)のとおり、昭和三七年度において被告の主張二(一)1〈1〉(以下、B預金という。)、同二(一)2(以下、C預金という。)のとおり、昭和三八年度において被告の主張三(一)1(以下、D預金という)のとおり、いずれも帳簿に記載されていない預金が存在したことは当事者間に争いがないところ、被告は、B預金は昭和三七年度の売上げを脱漏してなされたものであるから同年度の事業所得計算をするにあたつては帳簿記帳売上金額にこれを加算すべく、A、C及びD預金は各事業年度の仕入を仮装してなされたものであるから、各係争事業年度の所得計算をするにあたつては帳簿記帳仕入金額よりこれを差引くべきであると主張するので検討するに、成立に争いのない乙第一号証、乙第三ないし第一一号証、証人佐々木孝治の証言によつて真正に成立したと認められる乙第二号証、証人佐々木孝治の証言、原告山下真揮人の本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、A、B、C及びD各預金の入金はほとんど連日にわたり頻繁かつ継続的になされていること、パチンコ店は現金取引による業種であり、またローズパチンコ店においては帳簿は事務員に記帳させてはいたものの原告の妻山下カツミが同店の経理を担当し店内の現金を専ら管理しており、売上収入金の一部を取出し、あるいは仕入れを水増しして簿外所得を造出することは容易であつたこと、山下カツミには右各預金の入金状況に見合う個人的収入はなく、また原告は山下船舶株式会社(昭和三四年一二月九日に設立された山陽汽船株式会社を昭和三七年四月一日に社名変更したもの。以下、山下船舶という。)、山一汽船株式会社(以下、山一汽船という。)を経営しており、金融業も営んでいるが、これらはその業態からして右各預金の入金状況に見合う資金源とはなりえないのみならず、原告は右会社の経営のため一ケ月のうち三分の一くらいは東京に居住しており、たとえ右会社及び金融業によつて相当の収入をあげえたとしても右各預金の入金状況に見合う入金をなしうるものではないこと及び山下カツミは、呉税務署員の調査に際し、A、C及びD各預金はローズパチンコ店の仕入を水増しし、B預金は売上金の一部を脱漏してその部分を預入れた旨供述していることが認められ、右認定に反する証拠はない。(尤も、証人山下カツミは、呉税務署員の調査が長期にわたりかつ厳しかつたために意に反して右供述をした旨証言するが、右は前記各証拠に照らして採用しがたく、仮にそのとおりであつたとしてもいまだ右認定を左右するに足らない。)

右認定事実によれば、右各簿外預金は、被告主張のとおり仕入を仮装し、あるいは売上を脱漏してなされたものと推認するのが相当であり、被告が原告の本件各係争事業年度の所得計算をするにあたつて、A、C及びDの各預金額を昭和三六、三七、三八年度分の帳簿記帳仕入金額からそれぞれ差引き、B預金額を昭和三七年度分の帳簿記帳売上金額に加えたことは正当として是認できる。

3  被告の主張二(一)1〈3〉について

被告は、その主張二(一)1〈3〉において、原告が山下船舶、山一汽船に対し仮払(貸付)した金員の昭和三七年度中の増加額のうち右両会社帳簿記帳額とローズパチンコ店帳簿記帳額との差額金七、八〇九、九九九円はローズパチンコ店の売上げを脱漏してなされたものであるから、所得計算をするにあたつてはこれをローズパチンコ店帳簿記帳売上金額に加算すべきであると主張するので検討するに、証人佐々木孝治の証言によつて真正に成立したと認められる乙第一三号証の一ないし二六、証人佐々木孝治、同藤元昇の各証言、原告山下真揮人の本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告から山下船舶、山一汽船に対する仮払(貸付)は、概ね一定額が、ほとんど連日にわたり頻繁かつ継続的になされているところ、原告には右仮払(貸付)状況に見合う個人的収入はないこと、原告は、ローズパチンコ店の帳簿に右両会社への昭和三七年度中における仮払(貸付)金増加額として合計金三、五六九、七一七円の記帳をしていること、ローズパチンコ店の帳簿は売上げの除外仕入れの水増しが行われており、信憑性に乏しいこと、山下船舶、山一汽船は、株主の大半がいわゆる同族の者で占められ、原告がその経営についてほぼ全権を掌握しているいわゆる個人会社であること及び山下船舶、山一汽船の帳簿には原告及びローズパチンコ店からの昭和三七年度中における仮払(借入)金増加額として合計金一〇、九六九、二五〇円が記帳されており、右両会社は、原告及びローズパチンコ店からの借入後、これを業務上の支払に充てていることが認められ、右認定に反する証拠はない。そしてパチンコ店が現金取引による業種であり、またローズパチンコ店において売上収入金の一部を取出し簿外所得を造出することが容易であつたことは前記認定のとおりである。

右認定事実によれば、山下船舶、山一汽船の昭和三七年度中における原告及びローズパチンコ店からの仮受(借入)金増加額と、ローズパチンコ店の同年度中における仮払(貸付)記帳額との差額金七、三九九、五三三円は、ローズパチンコ店の売上げを脱漏してなされたものと推認するのが相当であつて、被告の右主張は右限度で容認できる。

なお、右仮払(貸付)金増加額計算関係は次のとおりである。

〈省略〉

4  被告の主張二(一)1〈2〉、〈4〉、〈5〉、〈6〉について

被告は、その主張二(一)1〈2〉、〈4〉、〈5〉、〈6〉において、原告が昭和三七年度中に現金を引出し或いは預替した預金又は支出した金員の資金源が不明であり、これを売上除外金からなるものとして売上金額に加算すべきであるというのであるが、ある年度内において現金を引出し又は預替した預金が存在しあるいは金員を支出したとしても、その資金源が当該年度内において収入された金員によるものとは必ずしも言えず、他の年度内における収入金が蓄積されこれが資金源となつている可能性も十分あるのであつて、資金源が不明で当該年度の収入金との関連性がないかぎり、そして現に本件では右関連性を認めるに足りる証拠はないのであるから、仮に被告主張のとおり預金の引出し、預替、金員の支出等があつたとしてもこれを昭和三七年度分の事業収入に帰属するものと言うことはできず、結局被告主張の右各金額を売上金額に加算すべきものではない。

5  被告の主張二(一)1〈7〉ないし〈10〉について

被告は、被告主張の方法で昭和三七年度分の原告記帳売上金額に右2、3、4記載の金額を加算した後、被告の主張二(一)1〈7〉ないし〈10〉のとおり使途不明の出金あるいはローズパチンコ店の収入以外に起因することが明らかな原告の収入の額を控除するものとし、原告も右出金ないし収入金が存在したことは認めているのであるが、本件においては資産負債の増減計算によつて原告の事業所得を推定しようとするものではなく、まずローズパチンコ店の売上収入金額を推定し、これから右事業に要したと認められる諸経費を控除してローズパチンコ店の所得を推定しようとするものであつて、被告主張の右出金ないし収入による金額がローズパチンコ店売上金額の中に混入することはないのであるから、売上金額を算定するにあたつて被告主張の右金額を控除すべき何ら合理的理由は存しない。

6  以上の次第で、昭和三七年度分の売上金額は金二三二、九八八、〇三八円、仕入金額は、昭和三六年度分が金一七九、二二九、八七二円、昭和三七年度分が一七七、二六八、一三一円、昭和三八年度分が金一七五、八三四、一五八円ということができる。

(二)  台調整費について

1  昭和三六年度分

原告が帳簿に昭和三六年度分台調整費として金五、三四五、〇二〇円を記帳していたことは当事者間に争いがないところ、証人藤元昇の証言及び同証言によつて真正に成立したと認められる乙第一四号証の一、二、四、五によれば被告は、原告記帳の右台調整費のうちには新旧台材料費金一、七五五、四一二円が含まれていたのでこれは機械製造関係費として仕入の科目に属すべきものとして前記仕入金額の中に算入してあることが認められ、右認定に反する証拠はない。

そうすると右金額は、これを右金五、三四五、〇二〇円から控除すべきものであることは明らかであつて、結局被告が昭和三六年度分の台調整費を金三、五八九、六〇八円としたことは正当であり、いずれにしても所得計算に誤りはない。

2  昭和三七年度分

証人佐藤信久の証言及び同証言によつて真正に成立したと認められる乙第一六号証の一、六、七によれば、原告は帳簿に台調整費として金七、三八八、五九九円の記帳をしていたところ、被告は、右には新旧台材料費金二、九四一、七九七円及び台調整のための人件費金一、八六一、〇〇四円が含まれていたので、これらをそれぞれ仕入及び給与の各科目に属すべきものとしてそれぞれ当該科目に算入することとしたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

そうすると右金額はいずれもこれを右金七、三八八、五九九円から控除すべきことは明らかであつて、結局被告が昭和三七年度分の台調整費を金二、五八五、七九八円としたことは前同様正当である。

3  昭和三八年度分

原告が帳簿に昭和三八年度分台調整費として金八、七六三、二八九円を記帳していたことは当事者間に争いがないところ、証人佐々木孝治の証言及び同証言によつて真正に成立したと認められる乙第一八号証の一、六、一〇によれば、被告は、右には新旧台材料費等金四、八五三、八〇四円が含まれていたのでこれを仕入の科目に属すべきものとして仕入金額の中に算入したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

そうすると右金額は右金八、七六三、二八九円から控除すべきことは明らかであつて、結局被告が昭和三八年度分の台調整費を金三、九〇九、四八五円としたことは前同様正当である。

(三)  賄費について

原告が昭和三六年度分賄費として帳簿に金五二五、九九五円を記帳していることは当事者間に争いがないところ、原告は、昭和三六年度に帳簿に記入されていないが賄費としてさらに金四九四、六四五円を支出したというのであるが、所得計算にあたつて当然必要経費として控除されるものであるにもかかわらずその一部が帳簿に記帳され、一部が記帳されていないということは特に合理的理由が存しないかぎり不自然であつて、記帳がなされていないかぎり右支出はなかつたものと推認すべく、そして本件において右合理的理由は何ら認められない。なお原告主張の右数額は前示乙一四号証の二、五賄費欄記載の数字と一致しているが、証人藤元昇の証言によると、右数字は事前調査の補完の過程に生じたもので終局的に前示五二五、九九五円に含まれるものであることが認められる。

そうすると昭和三六年度の賄費は金五二五、九九五円と認めざるを得ない。

(四)  雑収入について

1  証人藤元昇の証言によつて真正に成立したと認められる乙第一四号証の一、二、五、証人佐藤信久の証言によつて真正に成立したと認められる乙第一六号証の一、八、証人佐々木孝治の証言によつて真正に成立したと認められる乙第一八号証の一、証人藤元昇、同佐藤信久、同佐々木孝治の各証言によれば、原告は昭和三六、三七、三八年度分の雑収入としてそれぞれ金八五八、〇四〇円、金六九〇、八〇四円、金六五四、八七〇円を帳簿に記帳していたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

2  架空名義預金

被告は、原告には帳簿に記載されていない預金が昭和三六年度に三浦孝名義で金九三、四七四円、船木和男名義で金三六九、六一二円、昭和三七年度に船木和男名義で金一二九、八五〇円が各存在し、右はいずれも顧客が他店のパチンコ玉をローズパチンコ店で打込んだものを選別し売却した代金を預入れたものであるから雑収入とすべきものとし、原告も右各預金の存在していることは認めているのであるが、前示乙第二号証、成立に争いのない乙第九号証によつてはいまだ右各預金が、他店のパチンコ玉を売却した代金でなされたものと認定するに足らず、その他右事実を認めるに足りる証拠はない。

そうすると右各預金を雑収入に加算すべきものではない。

3  給付補填備金

被告は、原告には昭和三七年度において金一〇四、〇〇〇円、昭和三八年度において金一二五、八〇〇円の給付補填備金の収入があつたのでこれを雑収入とすべきであるというのであるが、被告主張の各定期預金が仮に存在するとしても、右各定期預金がローズパチンコ店経営の収入金からなるものでない以上、これを事業所得を算定するに際し考慮すべきものでないことは明らかであるところ、この点に関し被告は何らの主張立証もなさない。

そうすると右金員は雑収入とすべきではないこととなる。

4  以上の次第で、昭和三六、三七、三八年度の雑収入は、それぞれ金八五八、〇四〇円、金六九〇、八〇四円、金六五四、八七〇円となる。

(五)  支払利息について

証人佐藤信久の証言によつて真正に成立したと認められる乙第一六号証の三、証人佐々木孝治の証言によつて真正に成立したと認められる乙第一七号証の四ないし八及び弁論の全趣旨によれば、原告は山陽汽船株式会社に対しローズパチンコ店事業から昭和三六年一二月三一日現在で金一、三二八、〇〇〇円の仮払い(貸付金を含む。以下同じ)をしており、また、昭和三七年一二月三一日現在で、山下船舶及び山一汽船に対し合計金四、八九七、七一七円の仮払いがあり、右仮払いは、右期間中恒常的に存在していたこと、右両会社は本件パチンコ店事業とは関連のないものであること及び被告は右昭和三六年一二月三一日の現在高と昭和三七年一二月三一日の現在高との平均額は金三、一一二、八五八円であるがこれを金三、一〇〇、〇〇〇円とし、当時の銀行の通常の利息により一年を三六五日として算出した金額(金二二六、三〇〇円)を右仮払金に対する利息相当金として、原告がローズパチンコ店事業の必要経費として計上している利息、割引料金一、一三九、四一八円から控除し昭和三七年度支払利息を九一三、一一八円としたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

右認定事実によつて考えるに、山下船舶株式会社、山一汽船株式会社が本件パチンコ店事業とは関係のないものである以上、右仮払金に対する利息相当金は当然これを収益しうる筈のものであるか、あるいは、右仮払金が本件パチンコ店事業のために保有されていれば、他からの借入れを要さず右仮払金の利息に相当する金員の支出も要しなかつた筈であつて被告が所得計算をするにあたつて右利息相当額を考慮したことは正当である。

そうすると原告の昭和三六、三七、三八年度の各事業所得はそれぞれ金一八、六四二、一六三円、金二三、三五六、五一一円、金二三、三五〇、七八〇円となり、被告の本件各更正処分はいずれも右金額の範囲内でなされているから適法である。

三、次に、過少申告加算税及び重加算税の賦課処分について検討するに、前示乙第一五、一七、一八号証の各一、証人佐々木孝治の証言によつて真正に成立したと認められる乙第一八号証の八、証人広津義夫の証言によつて真正に成立したと認められる乙第二〇号証、証人藤元昇、同佐々木孝治、同広津義夫の各証言及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告は昭和三六、三七、三八年度の事業所得をそれぞれ金四、四七四、四七四円、金七、九五一、〇〇〇円、金七、〇五一、一四五円として確定申告しているところ、被告がこれを昭和三六年度につき金一四、四九五、九八六円、昭和三七年度につき金二二、二〇六、四二七円、昭和三八年度につき金一七、七三八、七七二円とした(裁決による取消後のもの)ことが適法であることは前説示のとおりであり、したがつて原告は、その事業所得を、昭和三六年度分につき金七、八二一、五一二円、昭和三七年度分につき金一三、〇四七、四二七円、昭和三八年度分につき八、四〇五、六二七円の過少申告をしたことになること、右各過少申告額のうち昭和三六年度分の金一、〇二二、三九六円、昭和三七年度分の金八七、九二六円、昭和三八年度分の金三〇四、七八九円は、ローズパチンコ店の帳簿によれば昭和三六、三七、三八年度の各事業所得がそれぞれ金五、四九六、八七〇円、金八、〇三八、九二六円、金七、三五五、九四三円となるべきところを、原告は、公租公課、旅費、通信費、雑費等を過大に計上し、雑収入を過少にし、あるいは誤謬によつて右確定申告をしたものであること及びしかしながら右各年度の右以外の部分の過少申告額は、原告が売上げの一部を脱漏し、あるいは仕入額を過大に計上するなどしてローズパチンコ店の帳簿に記帳をし簿外所得を造出した結果なされたものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。

右認定事実によれば、被告の右各賦課処分は正当として是認できる。

四、最後に「原告の反論」について検討する。

1  原告は、被告の本件課税処分は合理的な推計課税の方法によらず租税法律主義に違反する旨主張するが、被告の本件課税処分を正当として是認できることは前説示のとおりであつて原告の右主張は理由がない。

2  原告は、本件課税処分が信義則に反し、また二重課税となつて違法であると主張するが、前説示のような瑕疵を放置して不当に課税を免れさせてまで保護すべき税法上の権利ないし利益が原告に存するものとは解しがたいし、また本件各処分がローズパチンコ店帳簿記帳額を基礎にしてなされていることは前記認定のとおりであつて二重課税となるものでないことは明らかであつて、原告の右主張はいずれも採用できない。

五、以上の次第で原告の本件請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 五十部一夫 裁判官 若林昌子 裁判官 上原茂行)

〈省略〉

表一

〈省略〉

▲は欠損を示す。

表二 三六年度分事業所得計算表

〈省略〉

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注 29の差引所得金額は、次の算式により計算したものである。

1+22-{(2+3-4)+(5+6+・・・+21+23+・・・+28)}

表三 三七年度事業所得計算表

〈省略〉

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〈省略〉

注 29の差引所得金額は、次の算式により計算したものである。

1+22-{(2+3-4)+(5+6+・・・+21+23+・・・+28)}

表四 三八年度事業所得計算表

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

注 29の差引所得金額は、次の算式により計算したものである。

1+22-{(2+3-4)+(5+6+・・・+21+23+・・・+28)}

表五

〈省略〉

〈省略〉

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表六

〈省略〉

〈省略〉

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